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「藤のうら葉」(題箋)

  御いそきのほとにも宰相の中将ハなかめ
0001【御いそき】−明石姫君東宮へまいり給事ナリ
0002【なかめかちにて】−雲居雁の事を思しつめるをいへり
  かちにてほれ/\しき心ちするをかつは
  あやしくわかこゝろなからしふねきそかし
  あなかちにかうおもふことならはせきもりの
0003【せきもりの】−<朱合点>
  うちもねぬへきけしきにおもひよハりた
  まふなるをきゝなからおなしくハ人ハるからぬ
  さまにみはてんとねんするもくるしう
  おもひみたれ給女君もをとゝのかすめ給しこと
0004【女君も】−左大臣又中務宮なとの夕霧に我御女をまいらせむとのそみ給し事なり
  のすちをもしさもあらはなにのなこりか
  はとなけかしうてあやしくそむき/\に」(1オ・997E)

  さすかなる御もろ恋なりをとゝもさこそこゝろ
0005【もろ恋なり】−<朱合点> 六 みこもりのかミしまさしきすちならはわかかた恋を諸恋になけ
  つよかり給ひしかとたけからぬにおほしわつらひ
  てかの宮にもさやうにおもひたちはてた
0006【をとゝ】−致ー
0007【かの宮にも】−中務宮の事夕霧の方よりうけひき給ハぬを思ひいたちハて給ふとハいへり
  まひなはまたとかくあらためおもひかゝつら
  はむほと人のためもくるしうわか御方さま
  にも人わらハれにをのつからかろ/\しき
  ことやましらむしのふとすれとうち/\の
  ことあやまりもよにもりにたるへしとかく
  まきらハしてな越まけぬへきなめりと
  おほしなりぬうへはつれなくてうらみとけぬ」(1ウ・997J)
0008【うへ】−上
0009【うらみとけぬ】−源与致ー

  御中なれはゆくりなくいひよらむも
  かゝとおほしはゝかりてこと/\しくもて
  なさむも人のおもハむところをこなりいかな
  るつゐてしてかはほのめかすへきなとおほす
  にやよひ廿日おほ殿の大宮の御き日にて
0010【おほ殿】−致ー
0011【大宮】−致ー母
  こくらくしにまうて給へり君たちみな
0012【こくらくし】−昭宣公建立之在深草
  ひきつれいきほひあらまほしくかむたちめ
  なともあまたまいりつとひ給へるに
  相の中将をさ/\けはひをとらすよそほ
  しくてかたちなとたゝいまのいみしき」(2オ・998B)

  さかりにねひゆきてとりあつめめてたき
  人の御ありさまなりこのおとゝをはつら
  しとおもひきこえ給しより見えたて
  まつるもこゝろつかひせられていといたう
  よをひしもてしつめて物し給ふをおとゝも
  つねよりハめとゝめ給みす経なと六条の
  院よりもせさせ給へり宰相の君ハ
  してよろつをとりもちてあハれにいとなミ
  つかうまつり給ふゆふかけてみなかへり給
  ほと花ハみなちりみたれかすみたと/\しき」(2ウ・998G)

  におとゝむかしをおほしいてゝなまめかしう
  うそ吹なかめ給ふ宰相もあハれなるゆふ
  へのけしきにいとゝうちしめりてあまけ
  ありと(て&
と)人々のさはくにな越なかめいりて
  ゐ給へり心ときめきにみたまふことやあり
  けん袖をひきよせてなとかいとこよなくハ
0013【袖をひきよせて】−致ー夕ー
  かむし給へるけふのみのりのえにをも
  たつねおほさはつミゆるし給ひてよや
  のこりすくなくなり行すゑの世におもひ
  すて給へるも恨きこゆへくなんとの給へは」(3オ・998L)

  うちかしこまりてすきにし御おもむけも
0014【すきにし御おもむけ】−三条大宮
  たのミきこえさすへきさまにうけ給をく
  こと侍しかとゆるしなき御けしきに
  はゝかりつゝなんときこえ給心あハたゝし
  きあま風にみなちり/\にきほいかへり
  給ぬきみいかにおもひてれいならすけしき
0015【きみ】−夕
  はみ給つらんなとよとゝもにこゝろをかけ
  たる御あた(△&
た)りなれははかなきことなれと
  みゝとまりてとやかうやとおもひあかし給ふ
  こゝらのとしころのおもひのしるしにや」(3ウ・999C)

  かのおとゝもなこりなくおほしよハりてはか
0016【かのおとゝも】−致ー
  なきつゐてのわさとハなくさすかにつき
  つきしからんをおほすに四月のついたち
0017【ついたちころ】−七日まてをいふ別習へし
  ころおまへのふちのはないとおもしろう
0018【おまへの】−致ー家
  咲みたれてよのつねの色ならすたゝにみ
  すくさむことおしきさかりなるにあそひ
  なとし給てくれ行ほとのいとゝ色まされる
  にとうの中将して御せうそこあり一日の花の
0019【とうの中将】−かしは木
  かけのたいめんのあかすおほえ侍しを御いとま
  あらはたちより給ひなんやとあり御文にハ」(4オ・999I)

    わかやとの藤の色こきたそかれに
0020【わかやとの】−うちのおとゝ
  たつねやハこぬ春のなこり越けにいと面白き
  枝につけ給へり待つけ給へるもこゝろ
  ときめきせられてかしこまりきこえ給ふ
    中/\に折やまとハむふちのはな
0021【中/\に】−夕霧返し
0022【ふちのはなたそかれときの】−貫之集 君にたにゆ△(△#
か)てへぬれは藤の花たそかれ時もしらすそ有ける
  たそかれときのたと/\しくハときこえて
  くちをしくこそおくしにけれとりな越し
  給へよときこえたまふ御ともにこそとの給へは
0023【御ともにこそ】−柏詞
  わつらハしきすいしんハいなとて返しつおとゝ
0024【わつらはしき】−夕ー詞
0025【おとゝの御まへに】−源ニ文ヲ
  の御まへにかくなんとて御覧せさせ給ふ」(4ウ・1000B)

  おもふやうありてものし給つるにやあらむ
0026【おもふやう】−源詞
  さもすゝみものし給ハゝこそハすきにしかた
  のけうなかりしうらみもとけめとの給
  御心をこりこよなうねたけなりさしも侍ら
0027【さしも侍らし】−夕詞
  したいのまへの藤つねよりもおもしろう
  さきて侍なるをしつかなるころほひなれは
  あそひせんなとにや侍らんと申給わさとつ
0028【わさと】−源詞
  かひさゝれたりけるをはやうものしたまへと
0029【さゝれ】−指
  ゆるしたまふいかならむとしたにハくるし
  うたゝならすなをしこそあまりこくて」(5オ・1000G)

  かろひためれひさむきのほとなにとなき
  わか人こそふたあひハよけれひきつくろ
  はんやとてわか御れうの心ことなるにえな
  らぬ御そともくして御ともにもたせてたて
  まつれ給わか御方にてこゝろつかひいミしう
  けさうしてたそかれもすき心やましき
  ほとにまうて給へりあるしの君たち中
0030【あるし】−致ー
0031【中将】−柏ー
  将をはしめて七八人うちつれてむかヘいれ
  たてまつるいつれとなくおかしきかたちと
  もなれとな越人にすくれてあさやかに」(5ウ・1000L)

  きよらなる物からなつかしうよしつきは
  つかしけなりおとゝおましひきつくろ
0032【おとゝ】−致ー
  ハせなとし給ふ御よういをろかならす
  かうふりなとし給ていてたまふとてきたの
  かたハ(ハ=
<朱>)かき女房なとにのそきてみ給へいと
  かうさくにねひまさる人なりようひなといと
0033【かうさくに】−夕 スクレ
  しつかにもの/\しやあさやかにぬけいて
  およすけたるかたハちゝおとゝにもまさりさま
  にこそあめれかれハたゝいとせちになまめかし
  うあひきやうつきてみるにゑましく世の」(6オ・1000D)

  中わするゝ心ちそしたまふおほやけさ
  まハすこしたはれてあされたるかたなり
  しことはりそかしこれハさえのきはも
  まさり心もちゐをゝしくすくよかにたら
0034【をゝしく】−雄抜又ヌケイテタル心
  いたりとよにおほえためりなとの給ひて
  そたいめし給ものまめやかにむへ/\しき
  御ものかたりハすこしハかりにて花のけふに
  うつり給ぬ春の花いつれとなくみなひらけ
  いつる色ことにめ越おとろかぬハなきを心みし
  かくうちすてゝちりぬるかうらめしうおほゆる」(6ウ・1000I)

  ころほひこの花のひとりたちをくれて
  夏に咲かゝるほとなんあやしう心にくゝ
0035【夏に咲かゝる】−<朱合点> 拾 夏にこそさきかゝりけれ藤の花松にとのミも思けるか哉
  あはれにおほえ侍るいろもはたなつかしき
  ゆかりにしつへしとてうちほゝゑミ給へる
  けしきありてにほひきよけなり月は
0036【月はさしいてぬれと】−下ニ七日ノ夕月夜とあり可習合也
  さしいてぬれと花の色さたかにも見えぬ程
  なるをもてあそふに心越よせておほみき
  まいり御あそひなとし給うおとゝほとなく
0037【おとゝ】−致ー
  そらゑひをし給てみたりかはしくしひゑ
  ハし給をさる心していたうすまひなやめり」(7オ・1002@)

  君はすゑのよにハあまるまてあめのしたの
0038【君は】−致詞
  いふそくにものし給ふめるをよはいふりぬる
  人おもひすて給ふなんつらかりける文籍
0039【文籍】−フンセキ
  にも家礼といふことあるへくやなにかしの
0040【家礼といふこと】−子の父をうやまふ事也他人なれとも子に准して礼をいたすをはいまの世にも家礼といへり内大臣の我ト称する詞也
  をしへもよくおほししるらむとおもひ給ふ
  るをいたうこゝ(こゝ
こゝ<朱>)ろなやまし給ふとうらみ
  きこゆへくなんなとの給ひてゑいなきにや
  おかしきほとにけしきはミ給いかてかむかしを
0041【むかしを】−夕ー詞
  おもふたまへいつる御かはりともにハみをすつ
  るさまにもとこそ思給へしり侍をいかに」(7ウ・1002F)

  御覧しなすことにか侍らん本よりおろかなる
  心のおこたりにこそとかしこまりきこえ給
  ふ御ときよくさうときてふちのうらはのと
0042【さうときて】−イソカシ
0043【ふちのうらはのと】−<朱合点> 後 春日さす藤のうらはのうらとけて君しおもハゝ我もたのまん
  うちすし給へる御けしき越給はりて頭中将
0044【頭中将】−柏
  はなの色こくことにふさなかきを折てまら
  うとの御さかつきにくはふとりてもてなや
  むにおとゝ
    紫にかことハかけむふちのはな
  まつよりすきてうれたけれとも宰相
0045【まつよりすきて】−待過
0046【うれたけれ】−憂
  盃をもちなからけしきはかりはいし」(8オ・1002K)

  たてまつり給へるさまいとよしあり
    幾かへり露けき春越すくしきて
0047【幾かへり】−夕霧
  はなのひもとくをりにあふらんとうの中将に
  たまへは
    たをやめの袖にまかへる藤の花
0048【たをやめの】−かしは木 婦人
  みる人からや色もまさらむつき/\すん
0049【すん】−巡
  なかるめれとゑひのまきれにはか/\しからて
  これよりまさらす七日の夕つく夜かけほ
  のかなるにいけのかゝみのとかにすミわたれり
  けにまたほのかなる木すゑとものさう/\しき」(8ウ・1003C)

  比なるにいたうけしきはミよこたハれる
  松のこたかきほとにはあらぬにかゝれる花の
  さまよのつねならすおもしろし例の
  弁少将こゑいとなつかしくてあしかきをう
0050【弁少将】−紅
0051【あしかき】−<朱合点> 催ー
  たふおとゝいとけやけうもつかふまつるかなと
0052【けやけう】−常花<ケヤケシ> けやけきハ花の字也 爰テノ心ハ無憚ツカマツレト云心也
  うちみたれ給てとしへにけるこのいゑのと
0053【としへにける】−致ー助音 破タル家ノ心ナリ
  うちくハへ給へる御こゑいとおもしろしおか
  しきほとにみたりかはしき御あそひ
  にて物おもひのこらすなりぬめりやう/\
  夜更行ほとにいたうそらなやみして」(9オ・1003H)

  みたり心ちいとたへかたうてまかてん空も
  ほと/\しうこそ侍ぬへけれとのいところゆつり
0054【ほと/\しう】−<朱合点> 拾 宮つくるひたのたくミのてうのをとほと/\し△(△#
か)るめをも見る哉 是ハおそろしき心歟<右> 拾 なけきこる人いる山のおのゝゑのほと/\しくも成にける哉 これハうと/\しき心<左>
  給てんやと中将にうれへ給おとゝ朝臣や御や
0055【中将】−柏
  すみ所もとめよおきないたうゑひすゝミて
  むらいなれハまかりいりぬといひすてゝいり
  給ぬ中将はなのかけの旅ねよいかにそや
  くるしきしるへにそ侍やといへハ松にちきれる
0056【松にちきれる】−<朱合点> 六 みとりなる松にちきれる藤なれと(と&
と)おのか比とそ花ハさきける 貫之
  ハあたなる花かはゆゝしやとせめ給中将
  ハ心のうちにねたのわさやとおもふところ
  あれと人さまのおもふさまにめてたきに」(9ウ・1004@)

  かうもありはてなむと心よせわたることな
  れはうしろやすくみちひきつおとこ君ハ
0057【おとこ君】−夕
  夢かとおほえ給ふにもわかミいとゝいつかしう
  そおほえ給けんかし女ハいとはつかしう(う#
と)おもひ
0058【女は】−雲ー
  しミてものし給もねひまされる御あり
  さまいとゝあかぬところなくめやすし世の
0059【世のためしにもなりぬへかりつる】−<朱合点> 伊勢集 恋するにしぬる物とハきかねとも世のためしにも成ぬへきかな
  ためしにもなりぬへかりつるみを心もてこそ
  かうまてもおほしゆるさるめれあはれを知
  給ハぬもさまことなるわ(わ&
わ)さかなとうらみき
  こえ給中(中
<朱>少<墨>)将のすゝミいたしつるあしかきの」(10オ・1004E)
0060【あしかきの】−<朱合点>

  おもむきハみゝとゝめたまひつやいたきぬし
0061【いたき】−片腹
0062【ぬしかな】−弁少ー
  哉なかはくちのとこそさしいらへまほし
0063【かはくちの】−<朱合点> 川口の関の荒垣(△&
垣)まもれともいてゝわれねぬ関のあしかき 催馬ー呂哥
  かりつれとの給へハ女いときゝくるしとおほして
    あさきな越いひなかしける川くちハ
0064【あさきな越】−雲ゐのかり
  いかゝもらしし関のあらかきあさましとの
  給さまいとこめきたりすこしうちハらひて
    もりにけるくきたのせきを川くちの
0065【もりにける】−夕霧 名モレタル也
0066【くきたのせき】−奥州白川菊多関<キクタノセキ>
  あさきにのミハおほせさらなんとし月のつ
  もりもいとわりなくてなやましきに
  のおほえすとゑひにかこちてくるしけに」(10ウ・1004L)

  もてなしてあくるもしらすかほなり人/\
0067【あくるもしらす】−<朱合点> 玉すたれ
  きこえわつらふをおとゝゑ(ゑ
<朱>、ゑ$)たりかほなるあさ
  ゐかなととかめ給ふされとあかしはてゝそ
  いて給ふねくたれの御あさかほみるかひあり
0068【ねくたれの】−<朱合点> 六 ねくたれのあさかほの花秋きりにおもかくしつゝ見えぬ君かな
  かし御文ハな越しのひたりつるさまの心
  つかひ(ひ+
に)てある越なか/\今日ハえきこえ給
  ハぬをものいひさかなきこたちつきしろう
  におとゝわたりて見給ふそいとハりなきや
0069【おとゝ】−致
  つきせさりつる御けしきにいとゝおもひ
  しらるゝ身のほと越たえ(え$
へ)ぬ心に又き△(△#こイ)えぬ」(11オ・1005C)

  へきも
    とかむなよしのひにしほるても(も=
をイ<朱>たゆミ
0070【とかむなよ】−夕霧
  けふあらハるゝ袖のしつくをなといとなれ
  かほなりうちゑミてゝも(ゝも$
てを)いミしうもかき(き<朱>)ら
0071【うちゑみて】−致ー
  れり(り#
)にけるかななとの給もむかしのなこり
  なし御返いといてきかたけなれは見くる
  しやとてさもおほしはゝかりぬへきこと
  なれはわたり給ぬ御つかひのろくなへて
  ならぬさまにて給へり中将をかしきさまに
0072【中将】−柏
  もてなし給ふつねにひきかくしつゝ」(11ウ・1005H)

  かくろへありきし御つかひけふハをもゝち
  なと人々しくふるまふめり右近のそう
0073【右近のそう】−夕ー使 将監
  なる人のむつましうおほしつかひ給なり
  けり六条のおとゝもかくときこしめして
  けり宰相つねよりもひかりそひてまいり
0074【宰相】−夕
0075【まいり】−源へ
  給へれはうちまもり給てけさハいかに文なと
0076【けさは】−源心詞
  ものしつやさかしき人も女のすちにハ
  みたるゝためしあるを人わろくかゝつらひ
  心いられせてすくされたるなんすこし
  人にぬけたりける御心とおほえける」(12オ・1005M)

  おとゝのみをきてのあまりすくみてなこ
0077【おとゝ】−致
  りなくくつをれ給ぬるをよ人もいひ出る
  事あらんやさりとても我かたゝけうおもひ
  かほに心をこりしてすき/\しき心はへ
  なともく(く#
<墨><朱>、<墨>)し給ふなさこそおいらかにおほき
  なる心をきてとみゆれと(は&
と)したの心はへ
  をか(をか#
おゝ)しからすくせありて人見えにくき
  ところつき給へる人なりなと例の教へ
  きこえ給ことうちあひめやすき御あはひと
  おほさる御ことも見えすすこしかこのかみ」(12ウ・1006D)
0078【御ことも】−夕

  はかりと見え給ふほか/\にてハおなしかほと
  うつしとりたるとみゆるを御まへにてハ
  さま/\あなめてたと見え給へりおとゝハうす
0079【うすき御な越し】−薄花田
  き御な越ししろき御そのからめきたる
0080【しろき御そ】−重ノ衣
  かもんけさやかにつや/\とすきたるをたて
0081【つや/\と】−発
  まつりてな越つきせすあてになまめ
  かしうおハします宰相殿(殿+
ハ)すこし色
  ふかき御なをしに丁子そめのこかるゝまて
  しめるしろきあやのなつかしき越き給
  へることさらめきてえんに見ゆ灌仏ゐて」(13オ・1006J)
0082【灌仏ゐて】−国史云承和七年四月八日請律師伝灯大法師位静安於清涼殿始行灌仏事

  たてまつりて御導師をそくまいりけれハ
  日暮て御かた/\よりハらはへいたしふせなと
0083【ふせなと】−灌仏布施昔銭也 中比より紙になされたり舟ツヽミといふ
  おほやけさまにかハらす心/\にし給へり
0084【おまへのさほう】−内清涼殿始行
  まへのさほうをうつして君たちなとも
  いりつとひてなか/\うるハしきこせんより
  もあやしう心つかひせられておくしかちなり
  宰相ハしつこゝろなくいよ/\けさうしひき
  つくろひていて給ふをわさとならねとなさけ
0085【いて給ふ】−致ーへ
0086【なさけたち】−夕霧の思かけ給ふ女房の事なり
  たち給わか人ハうらめしとおもふもあり
  けりとしころのつもりとりそへておもふ」(13ウ・1007A)

  やうなる御なからひなめれハみつもゝらむやハ
0087【みつもゝらむやハ】−<朱合点> 堅固なる契をいふ水洩不通故言也 伊せー なとてかくあふこかたミと成ぬらん水もらさしとむすひし物を
  あるしのおとゝいとゝしきちかまさりをうつ
0088【あるしのおとゝ】−致
  くしき物におほしていみしうもてかし
  つききこえ給ふまけぬるかたのくちおし
  さはな越おほせとつミものこるましうそ
  まめやかなる御心さまなとのとしころこと心
  なくてすくしたまへるなと越ありかたく
  おほしゆるす女御の御有様なとよりもはな
0089【女御】−弘ー
  やかにめてたくあらまほしけれはきたのかた
0090【きたのかた】−二条おとゝの四君雲井雁のまゝ母也
  さふらふ人/\なとハ心よからすおもひいふ」(14オ・1007G)

  もあれとなにのくるしき事かはあらむ
  あせちの北の方なともかゝるかたにてうれしと
0091【北の方】−雲井雁の実母也
  おもひきこえ給けりかくて六条院の
  御いそきハ二十よ日のほとなりけりたいの上
0092【御いそき】−明ー中ー東宮へ参
0093【たいの上】−紫
  みあれにまうて給とてれいの御かた/\いさ
0094【まうて】−酉日ノ暁参詣
0095【れいの御かた/\】−賀茂祭前日垂迹石上にて神事あり御形<アレ>といふ又御生<ムマレ>又御禊(禊#)玉依姫の別雷神を生給ふ形ヲあらハし給ふへ御形<アレ>
  なひきこえ給へとなか/\さしもひきつゝ
  きて心やましきをおほしてたれも/\
  もと(もと$
とま)り給てこと/\しきほとにもあらす
  御くるま二十斗して御前なともくた/\しき
  人数おほくもあらすことそきたるしもけはひ」(14ウ・1007M)

  ことなりまつりの日のあか月にまうへ(へ<朱>)た
  まひてかへさにハ物御覧すへき御さしきに
0096【御さしき】−桟敷
  おハします御方かたの女房おの/\くる
  まひきつゝきて御まへところしめたるほと
  いかめしうかれはそれとゝをめよりおとろ
  おとろ/\しき御いきほひなりおとゝハ
0097【おとゝは】−源心詞
  中宮の御はゝ宮す所の車をしさけられ
0098【中宮】−秋
  たまへりしをりのことおほしいてゝ時に
  より心おこりしてさやうなることなん
  なさけなき事なりけるこよなくおもひ」(15オ・1008C)

  けちたりし人もなけきおふやうにてな
0099【なくなりにき】−葵上
  くなりにきとそのほとハの給ひけちて
0100【のこりとまれる人】−夕
  こりとまれる人の中将ハかくたゝ人にて
0101【中将】−夕
  わつかになりのほるめり宮ハならひなき
0102【宮】−秋
  すちにておはするも思へハいとこそあはれ
  なれすへていとさ(△&
さ)ためなき世なれはこそなに
  事もおもふさまにていけるかきりのよ越
  すくさまほしけれとのこり給ハむすゑ
  の世なとのたとしへなきおとろへなと越さへ
  思はゝからるれはとうちかたらひ給てかむ」(15ウ・1008H)

  たちめなとも御さしきにまいりつとひ
  給へれはそなたにいて給ぬ近衛つかさの
0103【近衛つかさのつかひ】−奉東遊舞人倍<ヘ>従近衛被官也賀茂春日祭同
  つかひハとうの中将なりけりかのおほとの
0104【とうの中将】−柏
0105【かのおほとの】−致ー
  にていてたつ所よりその(の#
)人/\ハまいり
0106【いてたつ】−出立帰色々儀式アリ可聞師説
  たまふけるとうないしのすけもつかひなり
0107【とうないしのすけ】−惟光女
  けりおほえことにてうちとうくうよりはし
  め奉りて六条院なとよりも御とふらひとも
  ところせきまて御心よせいとめてたし
  宰相の中将いてたちのところにさへとふ
  らひ給へりうちとけすあはれをかはし」(16オ・1009@)

  給御中なれはかくやむことなきかたにさた
  まり給ぬるをたゝならすうちおもひけり
    なにとかやけふのかさしよかつ見つゝ
0108【なにとかや】−夕霧
  おほめくまてもなりにけるかなあさましと
0109【おほめくまても】−久不逢心
  あるをおりすくし給ハぬはかりをいかゝ思ひ
  けんいと物さハかしくるまにのるほとなれと
    かさしてもかつたとらるゝくさのなハ
0110【かさしても】−藤内侍すけ
  かつらをおりし人やしるらんはかせなら
0111【かつらをおりし】−拾 久方の月のかつら
  てハときこえたりはかなけれとねたき
0112【はかなけれ】−夕心
  いらへとおほすな越このないしにそおもひ」(16ウ・1009G)

  はなれすはひまきれ給へきかくて御まいり
0113【御まいり】−明ー中
  ハきたのかたそひ給ふへき越つねになか/\
0114【きたのかた】−紫
  しうえそひさふらひ給ハしかゝるつゐてに
  かの御うしろミをやそへましとおほすうへもつ
0115【かの御うしろミ】−明ー上
0116【うへも】−紫
  ゐにあるへきことのかくへたゝりてすくし
  給ふをかの人もゝのしとおもひなけかるらむ
  この御心にもいまハやう/\おほつかなく
0117【この御心】−明ー中
  はれにおほししるらんかた/\心をかれたて
  まつらんもあいなしとおもひなり給て
  をりにそへたてまつり給へまたいとあえ」(17オ・1009L)

  かなるほともうしろめたきにさふらふ人と
  てもわか/\しきのミこそおほかれ御めのと
  たちなともみをよふことの心いたるかきり
  あるをみつからハえつとしもさふらハさらむ
  ほとうしろやすかるへくときこえ給へはいと
  よくおほしよる哉とおほしてさなんと
  なたにもかたらひの給けれはいみしく
  うれしくおもふことかなひ侍る心ちして
  のさうそくなにかのこともやむことなき
  御ありさまにおとるましくいそきたつ」(17ウ・1010C)

  あまきミなんな越この御をいさきみたて
  まつらんの心ふかゝりけるいま一度見奉る
  よもやといのちをさへしふねくなして
  ねんしけるをいかにしてかはとおもふも
  かなし其よハうへそひてまいり給ふに御(御$

  てくるま(てくるま$
)さて車にもたちくたりうちあゆミ
  なと人わるかるへき越わかためはおもひ
  はゝからすたゝかくみかきたてまつり給ふ
  たまのきすにてわかかくなからうるをかつは
  いみしう心くるしう思まいりのきしき」(18オ・1010I)

  人のめおとろく斗のことハせしとおほし
  つゝめとをのつからよのつねのさまにそ
  あらぬやかきりもなくかしつきすへたて
  まつり給てうへハまことにあハれにうつくし
  とおもひきこえ給ふにつけても人にゆつる
0118【人にゆつる】−紫の上の御子ナキ事をいふ
  ましうまことにかゝる事もあらましかはと
  おほすおとゝも宰相の君もたゝこの事
  ひとつをなんあかぬ事かなとおほしける
  三日すこしてそうへハまかてさせ給たちか
  ハりてまいり給よ御たいめんありかく」(18ウ・1011@)

  おとなひ給けちめになんとし月の程も
  しられ侍れはうと/\しきへたてハのこる
  ましくやとなつかしうの給て物語なとし
  給これもうちとけぬるはしめなめり物なと
  うちいひたるけはひなとむへこそハとめさま
  しう見給またいとけたかうさかりなる
  御けしき越かたみにめてたしとみてそこ
  らの御なかにもすくれたる御心さしにて
  ならひなきさまにさたまり給けるもいと
  ことハりとおもひしらるゝにかうまてたち」(19オ・1010E)

  ならひきこゆるちきりをろかなりやはと
  おもふ物からいて給ふきしきのいとことによそほ
  しく御手車なとゆるされ給て女御の御
  有様にことならぬをおもひくらふるにさすかな
  るみのほとなりいた(た$
、た+と)うつくしけにひゝなのやう
  なる御有様を夢の心ちしてみたてまつる
  にも涙のミとゝまらぬハひとつものとそ見えさり
0119【ひとつもの】−<朱合点> 後 うれしきもうきもこゝろハ一にて別ぬ物は泪なりけり
  けるとしころよろつになけきしつみ
  さま/\うきみとおもひくしつるいのちも
  のへまほしうはれ/\しきにつけて誠に」(19ウ・1011J)

  住吉の神もをろかならすおもひしらるおもふ
  さまにかしつききこえてこゝろをよ
  はぬことハたおさ/\なき人のらう/\しさ
  なれはおほかたのよせおほえよりはしめ
  へてならぬ御有様かたちなるに宮もわかき
  御心ちにいと心ことにおもひきこえ給へりいと
  見たまへる御かた/\の人なとハこのはゝ君の
  かくてさふらひ給をきすにいひなしなとす
  れとそれにけたるへくもあらすいまめか
  しうならひなきこと越ハさらにもいはす」(20オ・1012B)

  心にくゝよしある御けはひをはかなきことに
  つけてもあらまほしうもてなしきこえ
  給へれは殿上人なともめつらしきいとみと
  ころにてとり/\にさふらふ人々も心をかけ
  たる女房のようい有様さへいみしくとゝのへ
  なし給へり上もさるへきをりふしにハ
  まいり給御なからひあらまほしううちとけ
  行にさりとてさしすきものなれすあな
  つらハしかるへきもてなしハたつゆなく
  あやしくあらまほしき人のありさま」(20ウ・1012G)

  心はへ也おとゝもなかゝらすのミおほさるゝ
  御よのこなたにとおほしつる御まいりのかひ
  あるさまにみたてまつりなし給て心からなれと
  世にうきたるやうにて見くるしかりつる宰相
  の君も思なくめやすきさまにしつまり
  給ぬれは御心おちゐはて給て今ハほいもと
  けなんとおほしなるたいのうへの御有様の
  見すてかたきにも中宮おハしませはをろかな
  らぬ御心よせ也此御方にも世にしられたる
  おやさまにハまつおもひきこえ給ふへけれは」(21オ・1012M)

  さりともとおほしゆつりけり夏の御方の
  時にはなやき給ましきも宰相の物し
  給へハとみなとり/\にうしろめたからすおほ
  しなり行あけむとしよそちになり給
  御賀のことをおほやけよりはしめ奉りて
  おほきなるよのいそき也その秋太上天皇に
0120【太上天皇になすらふ御くらゐ】−院司公卿判官代主典代院庁非位ー無例敦<アツ>明太子号小一条院其外無例漢太公高宗ノ父間曰太上ー皇師可聞師説
  なすらふ御くらゐえ給ふてみふくはゝり
  つかさかうふりなとみなそひ給かゝらてもよ
  の御心にかなはぬことなけれとな越めつらし
  かりけるむかしのれいをあらためて院し」(21ウ・1013D)

  ともなとなりさまことにいつくしうなりそひ
  給へハうちにまいり給へき事かたかるへき越そ
  かつハおほしけるかくてもな越あかすみかとは
  おほして世の中をはゝかりてくらゐをえ
  ゆつりきこえぬことをなむ朝夕の御嘆き
  くさなりける内大臣に(に#
)あかり給て宰相の
0121【内大臣】−致
0122【宰相の中将】−夕
  中将中納言になり給ぬ御よろこひにいて
0123【いて給て】−夕ー致ーへ
  給ひかりいとゝまさり給へるさまかたちより
  はしめてあかぬことなき越あるしのおとゝも
  なか/\人におされまし宮つかへよりハと」(22オ・1013I)

  おほしなをる女君の大輔のめのと六位す
  くせとつふやきしよひのこと物のをり/\
  におほしいてけれハきくのいとおもしろく(く
<朱>)
  うつろひたるを給ハせて
0124【給はせて】−大夫乳母
    あさみとりわかはの菊を露にても
0125【あさみとり】−夕霧 六位
  こきむらさきの色とかけきやからかりしを
0126【こきむらさきの色】−一位
  りのひとことはこそわすられねといとにほひ
  やかにほゝゑミて給へりはつかしういとをしき
0127【はつかしう】−大夫乳母
  物からうつくしうみたてまつる
    ふた葉よりなたゝるそのゝ菊なれは」(22ウ・1014A)
0128【ふた葉より】−大夫乳母返し
0129【なたゝるそのゝ菊】−<朱合点>

  あさき色わく露もなかりきいかに心をかせ
0130【あさき色】−浅緑の心ナリ
  給へりけるにかといとなれてくるしかる
  いきおひまさりてかゝる御すまひもところ
  せけれは三条殿にわたり給ぬすこしあれ
0131【三条殿】−大宮
  にたる越いとめてたくすりしなして宮のお
  ハしましゝかたをあらためしつらひてすみ
  給ふむかしおほえて(えて&
えて)あはれにおもふさまなる
  御すまひなりせんさいともなとちいさき木
  ともなりしもいとしけきかけとなり
  一村薄も心にまかせてみたれたりける」(23オ・1014F)
0132【一村薄】−<朱合点> 古今 君かうへし一むら薄虫のねのしけき野へにも成にけるかな

  つくろハせ給やり水のみくさもかきあら
  ためていと心行たるけしきなりおかしき
  ゆふ暮のほとをふたところなかめ給てあさ
  ましかりしよの御おさなさの物語なとし
  給に恋しきこともおほく人のおもひけむこ
  ともはつかしう女きミハおほしいつふる人
  とものまかてちらすさま(ま#
、+うし)/\にさふらひける
  なとまうのほりあつまりていとうれしと
  おもひあへりおとこ君
    なれこそハ岩もるあるしみし人の」(23ウ・1014L)
0133【なれこそハ】−夕霧

  ゆくゑはしるややとのまし水女きミ
0134【女きミ】−雲井のかりなり
    なき人のかけたにみえすつれなくて
  こゝろをやれるいさらゐの水なとの給ほとに
0135【いさらゐの水】−浅小川也
  おとゝ内よりまかて給けるをもみちの色に
0136【おとゝ】−致ー
  おとろかされてわたり給へりむかしおハさゐし
0137【むかしおはさゐし】−致ー
  御有様にもおさ/\かはる事なくあたり/\
  おとなしくすまひ給へるさまはなやかなるを
  みたまふにつけてもいと物あはれにおほさる
  中納言もけしきことにかほすこしあかミて
0138【中納言】−夕霧なり
0139【あかみて】−カヽル柄ヲ恥心
  いとゝしつまりて物し給あらまほしく」(24オ・1015C)

  うつくしけなる御あはひなれと女ハまたかゝる
  かたちのたくひもなとかなからんとみえ給へり
  おとこはきはもなくきよらにをハすふる
  人ともおまへにところえてかみさひたること
  ともきこえいつありつる御手習とものちり
  たるを御らんしつけてうちしほたれ給
  のミつの心たつねまほしけれとおきなハ
  こといみしくとの給ふ
0140【こといみ】−言忌
    そのかみのおい木ハむへもくちぬれ(れ$
ら)む
0141【おい木ハ】−古後達共
  うへしこ松もこけおひにけりおとこ君の」(24ウ・1015J)
0142【おとこ君の御さいしやうのめのと】−夕霧のめのとなり

  御さいしやうのめのとつらかりし御心もわすれ
  ねハしたりかほに
    いつれをもかけとそたのむふたはより
0143【いつれをも】−宰相乳母
  ねさしかはせる松のすゑ/\おい人ともゝ
  かやうのすちにきこえあつめたる越中納言ハ
  おかしとおほす女君ハあいなくおもてあかミ
  くるしときゝ給ふ神無月の二十日あまりの
  ほとに六条院に行幸あり紅葉のさかり
  にてけふあるへきたひの行幸なるに
  雀院にも御せうそこありて院さへわたり」(25オ・1018A)

  おハしますへけれは世にめつらしく有難き
  ことにてよ人も心をおとろかすあるしの院方も
  御心をつくしめもあやなる御心まうけを
  せさせ給ふみの時に行幸ありてまつむまは
  殿に左右のつかさの御馬ひきならへて左右
  近衛たちそひたるさほう五月のせちにあや
  めわかれすかよひたりひつしくたるほとにみなミ
  のしん殿にうつりおハします道のほとのそり
  橋わた殿にハにしきをしきあらハなるへ
  き所にハせんしやうをひきいつくしう」(25ウ・1016F)

  しなさせ給へりひんかしのいけに船とも
  うけてみつしところのうかひのおさ院の
  うかひをめしならへてうをおろさせ給へり
  ちいさきふなともくいたりわさとの御らんとハ
  なけれともすきさせ給ふみちのけふはかり
  になん山のもみちいつかたもおとらねと西の
  おまへハ心ことなる越なかのらうのかへをくつ
  し中門をひらきて霧のへたてなくて御
  覧せさせ給ふ御さふたつよそひてあるしの
  御さハくたれるをせむしありてな越(越
させ<朱>)給ふほと」(26オ・1016L)

  めてたく見えたれとみかとハな越かきりある
0144【みかとは】−朝覲行幸ニハ帛袷<ハクノアハセ>ヲ敷主上拝上皇
  いや/\しさをつくしてみせたてまつり給
0145【いや/\しさ】−敬
  ハぬことをなんおほしける池のいをゝ左少将取
  蔵人所のたかゝいのきたのにかりつかまつ
  れる鳥ひとつかひを右のすけさゝけてしん
  殿のひんかしより御まへにいてゝみはしの
  左右にひさ越つきてそうすおほきおとゝ
  こと給ててうしておものにまいるみこたちか
  むたちめなとの御まうけもめつらしきさまに
  つねのことともをかへてつかうまつらせ給へり」(26ウ・1017C)

  みな御ゑいになりて暮かゝるほとにかく
0146【かく所】−楽
  所の人めすわさとの大かくにハあらすなまめ
0147【大かく】−ヲホ
  かしきほとに殿上のわらハへまひつかうまつる
  朱雀院の紅葉の賀れいのふる事おほ
  しいてらる賀皇恩といふものをそうす
  るほとにおほきおとゝの御おとこのと越はかり
0148【おほきおとゝ】−致ー
0149【御おとこ】−弟
  なるせちにおもしろうまふうちのみかと御
  そぬきて給ふおほきおとゝおりてふたう
0150【おほきおとゝ】−致ー
0151【ふたう】−舞踏
  し給あるしの院きくをおらせ給てせいかい
0152【あるしの院】−源
  はのをりをおほしいつ」(27オ・1017H)

    色まさるまかきの菊もをり/\に
0153【色まさる】−源氏
  袖うちかけし秋をこふらしおとゝそのお
  りハおなしまひにたちならひきこえ給ひ
  しをわれも人にハすくれたまへるみなから
  な越このきハゝこよなかりけるほとおほし
  しらるしくれおりしりかほなり
    むらさきの雲にまかへるきくのはな
0154【むらさきの】−大おとゝ
  にこりなきよのほしかとそみるときこそ
0155【にこりなきよのほし】−慶雲寿星吉時出
0156【ときこそありけれ】−<朱合点>
  ありけれと聞え給ふゆふ風のふきしく
  もみちの色々こきうすきにしきをしき」(27ウ・1017M)

  たるわた殿のうへ見えまかふにハのおもにかた
  ちをかしきわらハへのやむことなきいへの
  こともなとにてあをきあかきしらつるはみ
  はうゑひそめなとつねのことれいのミつらに
  ひたい斗のけしきを見せてみしかき物
0157【ひたい】−額
0158【みしかき物とも】−小楽
  ともをほのかにまひつゝもみちのかけにかへ
  りいるほと日のくるゝもいとほ(ほ$
お)しけなりかく
  しよそなとおとろ/\しくはせすうへの御あそひ
  はしまりてふんのつかさの御ことゝもめす
0159【ふんのつかさ】−女官楽器ヲ納所
  物のけうせちなるほとにこせんにみな御こと」(28オ・1018E)
0160【けうせちなる】−興 切

  ともまいれり宇多の法師かはらぬ声
0161【宇多の法師】−宇陀ノ法師一条院内裏炎上時焼失寛平御物也 以檜作也 称又名等タナラシ
  も朱雀院ハいとめつらしくあはれにき
  こしめす
    秋をへて時雨ふりぬる里人も
0162【秋をへて】−朱雀院
  かゝるもみちのをりをこそみねうらめし
0163【うらめしけに】−朱雀院御代無行幸事ー
  けにそおほしたるやみかと
    よのつねのもみちとやみるいにしへの
  ためしにひけるにハのにしき越ときこえ
  しらせ給ふ御かたちいよ/\ねひとゝのほり
  給てたゝひとつ物とみえさせ給を中納言」(28ウ・1018K)
0164【中納言】−夕

  さふらひ給かこと/\ならぬこそめさましか
  めれあてにめてたきけはひやおもひな
  しにをとり(り
<朱>)さらんあさやかににほハしき
  所ハそひてさへみゆふへつかうまつり給いと
  おもしろしさうかの殿上人みハしに
  さふらふなかに弁の少将のこゑすくれたり
0165【弁の少将】−紅
  な越さるへきにこそと見えたる御なからひ
  なめり」(29オ・1019@)

(白紙)」(29ウ)

【奥入01】宇陀法師
    新儀式<四月旬儀>
    若有奏絃哥事者近衛府音楽記
    内侍奉仰出御屏風南辺召大臣々々起
    座跪候御屏風南頭即勅可召堪管
    絃親王公卿等大臣奉仰退還召出居令
    置草塾於御帳東西一行丈大臣先進
    着草塾次人依召移着大臣召書司
    々々一人執和琴出車障子戸献之
    <謂宇陀法/師也>各奏絲竹或召加殿上侍臣能歌」(30オ)

    者預之王卿廻勧盃数曲之後奏見参
    長保二年十一月十五日<小野右府>新宮之後
    初出御南殿曰大臣以下管絃人着御前
    草塾次召書司々々
    女嬬凡宇陀法師出自御障子戸置
    草塾前又絲竹之器次々取出皆書
    司女官役之
    或記云
    延久四年宇治殿御命云於南殿御遊之
    時召宇陀法師<和/琴>其詞云<御タナ/ラシ>此詞有」(30ウ)

    故之宇陀法師以檜作之先一条院
    御時内裏焼已々時焼失之」(31オ)

イ本
源氏卅九歳自三月廿日至十月以詞為巻名
梅か枝同年の事也」(後遊紙1オ)

二校了<朱>」(表表紙蓋紙)