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「花ちる里」(題箋)

  人しれぬ御心つからのものおもハしさハいつ(△&つ)
0001【人しれぬ】−榊巻夏此巻同
  となきことなめれとかくおほかたの世につ
  けてさへわつらハしうおほしみたるゝことの
  ミまされはもの心ほそく世中なへていとハし
  うおほしならるゝにさすかなる事おほかり
  麗景殿ときこえしハ宮たちもおハせす
0002【麗景殿】−花散姉
  院かくれさせ給てのちいよ/\あハれなる御
  ありさま越たゝこの大将殿の御心にもてかく
  されてすくし給ふなるへし御おとうとの
  三の君うちわたりにてハ(ハ
<朱>)かなうほのめき給ひ」(1オ・387E)
0003【三の君】−花ちる里也 始テ云

  しなこりのれいの御心なれハさすかにわす
  れもはて給はすわさともゝてなし給はぬに
  人の御心をのミつくしはて給ふへかめるをも
  このころのこることなくおほしみたるゝよのあ
  ハれのくさはひにハおもひいて給にハしのひか
  たくてさミたれの空めつらしくはれたる雲
  まにわたり給なにハかりの御よそひなくうちや
0004【御よそひ】−行粧
  つしてこせむなともなくしのひてなか
  河のほとおハしすくるにさゝやかなるいゑのこた
  ちなとよしはめるによくなること越あつまに(に=
をイ<墨>、をイ<朱>)」(1ウ・387K)

  しらへてかきあハせにきハゝしくひきなす
  なり御みゝとまりてかとちかなる所なれハ
  こしさしいてゝ見いれ給へハおほきなるかつら
  の木(木+
の)をひかせにまつりのころおほしいてられ
  てそこはかとなくけハひをかしきをたゝひとめ
0005【たゝひとめ】−花散里へ出給道中川にての事也 是モ源氏君玉さかに通給し所ナリ此巻にハしめていひ出せり
  見たまひしやとりなりとみ給たゝならす
  ほとへにけるおほめかしくやとつゝましけれと
  すきかてにやすらひ給ふおりしもほとゝきす
0006【すきかてに】−<朱合点> 難過 古今 夜やくらき道やまたく(たく$
とへ)るほとゝきすわか宿にしも過かてになく
  なきてわたるもよほしきこえかほなれは
  御車をしかへさせてれいのこれみついれ給ふ」(2オ・388C)

    おちかへりえそしのハれぬほとゝきす
0007【おちかへり】−源し 万葉に百千かへりとかけり
  ほのかたらひしやとのかきねにしんてむとお
  ほしき屋のにしのつまに人/\ゐたりさき/\
  もきゝしこゑなれハこわつくりけしき
  とりて御せうそこきこゆわかやかなるけし
  きともしておほめくなるへし
    ほとゝきすこととふこゑハそれなれと
0008【ほとゝきす】−返主不知
  あなおほつかなさみたれの空ことさらたとる
  とみれハよし/\うへしかきねもとていつる
0009【うへしかきねも】−<朱合点> 奥入 かこはねとよもきのまかき夏くれはうへしかきねもしけり合にけり<右> 紫明 花ちりしにわの(の+
木の)はもしけりあひてうへしかきねも△(△#え)こそわすれね<左>
  を人しれぬ心にはねたうもあハれにも思けり」(2ウ・388J)

  さもつゝむへきことそかしことハりにもあれは
  さすかなりかやうのきハにつくしの五せちか
0010【つくしの五せち】−大弐のむすめ也 源しのあひ給ひし人ナリ須磨巻に見えたり
  らうたけなりしハやとまつおほしいついか
  なるに(に
<朱>)つけても御心のいとまなくくるしけ
  なりとし月をへても猶かやうにみしあたり
  なさけすくし給はぬにしも中/\あまたの
  人の物おもひなくさなりかのほいのところハおほし
0011【ほいのところ】−花ー
  やりつるもしるく人めなくしつかにておはす
  るありさまを見給ふもいとあはれなりまつ
  女御の(△△&
御の)御かたにてむかしの御物語なときこえ給に」(3オ・389B)
0012【女御の御かた】−麗景

  夜ふけにけり廿日の月さしいつるほとに
  いとゝこたかきかけともこくらくみえわたりて
0013【こくらく】−事/\しき心にや木立の大なるをいふへし
  ちかきたち花のかほりなつかしくにほひて
  女(女+
御イ、イ#)の御けはひねひにたれとあくまてようい
  ありあてにらうたけなりすくれてはなや
  かなる御おほえこそなかりしかとむつまし
  うなつかしきかたにハおほしたりしものを
  なと思ひいてきこえ給につけてもむかしの
  ことかきつらねおほされてうちなき給郭公
0014【郭公ありつる垣ねのにや】−中川のやとのかきねなり
  ありつる垣ねのにやおなしこゑにうちなく」(3ウ・389G)

  したひきにけるよとおほさるゝほともえんなり
  かしいかにしりてかなとしのひやかにうちすんし給
0015【いかにしりてか】−<朱合点> いにしへのことかたらへハほとゝきすいかにしりてかなくこゑのする<朱>
    たちはなの香越なつかしみほとゝきす
0016【たちはなの】−源氏
  花ちる里をたつねてそとふいにしへの忘れ
0017【いにしへの】−源氏のことはナリ
  かたきなくさめにはな越まいり侍ぬへかりけり
  こよなうこそまきるゝ事もかすそふことも
  侍けれおほかたのよにしたかふものなれハ(ハ+
はかなきイ)
  かしかたりもかきくつすへき人すくなうなり
  ゆくをましてつれ/\もまきれなくおほさる
  らむときこえ給にいとさらなるよなれと」(4オ・390@)
0018【いとさらなるよ】−女御の事を源しのこゝろに思ひ給ふナリ

  ものをいとあハれにおほしつゝけたる御けし
  きのあさからぬも人の御さまからにやおほく
  あハれそそひにける
    人めなくあれたるやとはたちはなの
0019【人めなく】−女御
  花こそ軒のつまとなりけれとハかりのたま
  へるさハいへと人にハいとことなりけりとおほ
  しくらへらるにしおもてにハわさとなくし
0020【にしおもて】−三の君のすミ給ふ方也
  のひやかにうちふるまひ給ひてのそき給へるも
  めつらしきにそへて世にめなれぬ御さま
  なれはつらさもわすれぬへしなにや」(4ウ・390F)

  かやとれいのなつかしくかたらひ給もおほさぬ
  事にハあらさるへしかりにも見給ふかきりハ
  をしなへてのきハにはあらすさま/\につけて
  いふかひなしとおほさるゝハなけれハにやにくけ
  なくわれも人もなさけをかハしつゝすくし
  給なりけりそれをあいなしと思ふ人ハとにかく
0021【とにかく】−左右<トニカク>
  にかハるもことハりのよのさかとおもひなし給
  ありつるかきねもさやうにてありさまかはり
0022【かきねも】−中川の宿の事也
  にたるあたりなりけり」(5オ・390L)

花ちる里<墨> 二校畢<朱>」(前遊紙1オ)

一校畢<朱>」(後見返し)